会員校卒業生の体験「菓子づくりを仕事に選んでよかった!」

「好きなことを仕事にしている幸せ」

今井 誠

私が菓子職人を目指したのは、昔から料理が好きでその中でもお菓子を作ることが好きだったからです。またお菓子というのは結婚式やお葬式などの冠婚葬祭、誕生日などのお祝いなど人生の節目には欠かせないものであるということも菓子職人を目指した理由の一つです。

私は高校卒業後に専門学校に行きました。そこではお菓子作りの幅広い知識と基本的な技術を学びました。

パティシエを目指して入学した専門学校でしたが授業で、洋菓子のように華やかではないが日本の伝統文化である和菓子に魅力を感じ和菓子職人を志しました。

専門学校卒業後、小さな和菓子店に就職しました。大手の和菓子店を選ばなかった理由は分業制ではなく一通り仕事を覚えたかったので何でもやれる小さな和菓子店を選びました。そこは店の主人、先代と私という製造部門は三人でした。初日の一番最初にした仕事は今でもはっきりと覚えています。熱々の道明寺でこし餡を包むという桜餅の製造でした。私は二つしか包めませんでした。初日で技術も未熟ですから仕方がないと言えばそれまでですが、店の役に全く立っていないという情けなさがとても悔しかったです。そこから必死で技術を身に付けようと努力しました。しかし和菓子というのは四季折々の季節感というものを大事にするお菓子です。一年経たないと一通り目にはできません。春には桜餅や草餅、五月の端午の節句には柏餅に粽、夏にはあんみつやわらび餅や水まんじゅう、春秋のお彼岸にはおはぎといった具合いにその季節が過ぎてしまえば翌年まで全くやらないという商品もたくさんあります。そこで季節商品に関しては一年目は作業は遅くても丁寧に作ることを心がけ二年目は一年目に覚えた技術をしっかりと体に叩き込み三年目で完璧にしようと計画しました。

その他の上用まんじゅうや最中、焼き菓子等の通年商品もあるのでそれらは一日でも早く覚えようと、仕事から帰った家でも練習しました。それから和菓子の命でもある餡を炊くのも、使いやすい納得のいく餡を炊けるまでは一年以上かかりました。

三年もすると仕事はだいぶできるようになり店にも貢献でき、その頃から仕事は楽しくなってきました。ようやく和菓子職人として歩き出した頃だと思います。

その店を四年勤めステップアップとして次のお店へ勤めました。私が一つのお店にこだわらなかったのは、同じ和菓子でもいろいろな作り方があるからです。それぞれの店の特色というものがあるので幅広く学べます。

そこでは今までの製造ばかりでなく販売もするようになり直接お客様と接するようになりました。お客様の声にはお褒めの言葉や叱咤激励など様々なご意見がありとても参考になります。また何度も買いに来てくれるお客様を見ると嬉しくなります。

今はまた製造だけになり自分のレベルアップと共に技術指導もしています。私が踏んでいった階段のように後輩にも技術を習得していってもらうにはどうしたらいいか、時には優しく時には厳しく日々考えています。私が指導した後輩ができるようになっていくというのは、私が技術を覚えていったときのような楽しさがあります。

後輩に負けないように私も更なる努力をし技術を身に付けていきたいと思っています。

私は今、妻と一歳の娘と三人暮らしをしています。仕事から帰って一緒に遊びお風呂に入るのが一番の幸せです。このなんてない平凡な生活ですが、これがあるのも修業時代の努力が今の生活に結びついているのだと思います。ましてや好きなことを仕事にして生活できているので幸せだと思います。

いつかは小さくてもいいので、自分の納得のいくものを売る頑固な和菓子店を開くのが私の夢です。

PAGETOP