会員校卒業生の体験「菓子づくりを仕事に選んでよかった!」

「働くよろこび」

森本 菜摘

私は今、自分の好きなことを職業としています。毎日が勉強であり、壁にぶつかったり、つまづく事がほとんどです。体力もいります。自分に負けそうになる時もあります。しかし、こんな必死な毎日が決して嫌いではありません。それは、自分の大好きなお菓子作りを仕事として、働くよろこびを見つける事ができたからです。

私は小さい頃からケーキ屋さんを目指していたわけではありません。高校三年の夏には、何がやりたいのかわからなくなっていました。落ち着いて“一番すきなこと”を考えた時に最初に浮かんだ事がお菓子作りでした。よくお菓子を作っては、家族や友達に喜んでもらえること、笑顔になってもらえる事が私は大好きでした。勉強するなら好きな事を思いっきり勉強したいと思い、洋菓子の専門学校へ通わせてもらえることになりました。

始めはお菓子を作る事を自分の職業にするとまで深く考えていませんでした。しかしお菓子の世界に一歩足を踏み入れると、新しい発見、驚き、そして感動する毎日でした。手でたてたスポンジが膨らんだ時、いつも食べていたフルーツがキラキラ輝いて飾られた時、砂糖を溶かすと液体になって、何度も形を変えて心が震えるような飴細工になったり、私はどんどん夢中になっていきました。学生生活で、かけがえのない仲間と出会い、そして働かせて頂いている洋菓子店と出会いました。“毎日食べたくなるお菓子”私が初めてこの店のお菓子を食べた時に感じた事であり、またそれは、店が一番大事としている事でした。これを聞いた時私も、「また明日も食べたいな。」とにっこり笑顔になってもらえるようなお菓子を作りたいと思い、この道をとことん進もうと決めました。

私は働き出して二年目になりますが、始めは、自分の作業に仕事に必死で、お客様の事を考える事ができていませんでした。初めてデコレーションケーキにメッセージを書いた時は、手が震えた事しか覚えていません。それが今では、このケーキを贈る方の想い、受け取る方の想いを、その時の表情を想像してメッセージを書かせて頂いています。親から子へ、子から親へ、家族、友達、恋人への心のこもった贈り物に、私も関わる事ができるのです。全くの他人である私が、大切な大切な日に、幸せの瞬間に関わる事ができるのです。お客様から伝わる温かい心から、キラキラした目でショーケースを見ているお子さんから幸せや、そしてまたがんばれる力をもらっているのは私達の方なのです。特別な日でも、何気ない日々の中でも、お菓子は人を幸せにし、笑顔にしてくれます。今では、お客様から伝わる温かい心に応えられるように、心をこめてお菓子を作り、文字を書き、その温かさがまた広がるような、そんなお菓子を作りたいと心から思います。だからこそ、もっともっと努力をし、技術を磨き、決して妥協せず、自分の納得のいくものを心をこめて作りたいと思うのです。

もう一つ、働き出して常に感じるようになった事は、お菓子を作るということは、一人ではできないという事です。心をこめて作る私達がいて、それを笑顔で気持ち良く、心をこめてお客様へお渡しする販売の人達がいます。お客様が気持ち良く、わくわくして来て下さるよう掃除をしたり、店内をかわいく飾ってくれる人達がいます。たくさんの人の想いが詰まって、お客様の笑顔に、満足にそして「また来たいな。」という思いに繋がっていくと思うと、本当に心が温かくなります。私が好きな事を思いっきりできているのもたくさんの人に支えられているからです。私をずっと応援し続けてくれている家族、親戚。店に来てくれる友達。「近くを通ったから。」と、わざわざ足を運んで下さる先生方。そして、店の温かい人たち。私は洋菓子のコンテストに出させて頂いています。夜中まで一緒に練習、制作する店長、先輩。食事を作ってくれたり、「何かできることはないか。」と自分の事のように一生懸命になってくれる人たち。行き詰まった時、「いつでも来ていいよ。」と忙しい時間をさいて下さる洋菓子界の先生方。コンテストに出る先輩や友達は、めげそうになった時に力をくれ、またライバルでもあり、たくさんの刺激を受けます。本当に素晴らしい環境を与えて頂き、温かい人達に囲まれ支えてもらっている事に改めて気がつきます。

私は、自分の好きな事を職業としています。胸をはって、夢中になって毎日を過ごしています。お菓子の世界はとても広く、本当に素晴らしいです。つまづく時もあります。それを乗り越える事もあります。お客様との出会いに、たくさんの人との出会いに、そして人との繋がりに感動し、感謝する心を持てるようになったという事。そして、昨日の私より今日の私、今日の私より明日の私、と変わり続けたいと思う自分がいるという事。それが、私の働くよろこびです。

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